元祖着物男子!座談会《前半》

ゲージツ家のクマさん(篠原勝之さん)
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山川三太さん(元・劇団究竟頂(くきょうちょう)〈銀色テント〉座長)

 

ークマさんとサンタさんはいつ頃からのお付き合いですか?

三太:1970年位だから…35年の付き合い。

クマ:サンタが究竟頂(くきょうちょう)ってテントやってたころね。サンタんとこ行って泊めてもらったり。

三太:まぁ途中20年くらい抜けてるけどね。

クマ:サンタんとこ行ってもね、飽きられない内に、俺、猫みたいに出てっちゃうのね、すーっといなくなるだよ。

ー今日のお着物はどんなものですか?

クマ:木綿でね、山口はるみさんって言ってイラストレーターでね、今でも生きてるんだけど、それがね、浴衣を毎年やっててね。
今はやってないらしいんだけど。毎年柄が違ってね。これ最後かな。あんまり好きじゃなかったんだけど着てみるとなかなかいい。

三太:この前ツイッターに上げてたあれは?

クマ:あれ都はるみだよ。おはしょりを伸ばしてだ、それで作り変えたんだ。
けっこう男ものになるでよ。けどね、そんなにね、着ていけるもんじゃねぇんだ。やっぱ衣装だな。

三太:あれはクマさんしか着れない。

クマ:都はるみの大ファンだと思われても嫌だなぁ(笑)たまたまテレビで一緒した時に、クマさんひとつあげましょって。武道館か何かのコンサートで一回着たって。

ーおはしょりのお直しは自分で?

クマ:仕立てばばあだよ!遠くから俺を見ててもね、5センチ身頃が増えたなとか、見るだけでわかる。
いちいちこんなね、測んなくてわかるの。セクシーだよな。ばばあはね、銀座のマダムに作ってたの。東京都の無形文化財。

ー帯は?

クマ:ただの紐。巻き込んでるだけなの。昆布巻きみたいに。結ばないの。結ぶとね、これがね、座る時にね、ぶつかるからね。

三太:今着物を着て一番困るのが帯だよね。角帯を貝の口に結ぶと椅子に座る時つかえて困る。
だから私も羽織着てる時は片ばさみ。時代劇の浪人者みたいな結び方ね。これだと椅子に座っても邪魔にならない。

ー履き物は?

クマ:履き物はスニーカーだよ!

三太:クマさんって靴凝るんだよね。

クマ:俺ね、入れ物・履き物が好きなの。鞄とかね。靴もね、高いものは興味ない。
体を入れるものだからね靴ってものも。入れ物には、ちょっとね、こだわる。

ー三太さんの今日のお着物は?

クマ:いいお召しだなぁ。旦那風。けど暑そうだな。

三太:いい着物だから、暑くないよ(笑)足袋と長襦袢は麻。長着は紗、帯と羽織が羅。
私も若い頃はクマさんみたいに着流しに巻帯だったけど、今はもう堅気の人間だから旦那風の着こなし専門。着こなしって、結局生き方だからね。

クマ:ほ〜っ。俺もね、テレビ用だけどね、流れに菖蒲みたいな絵をね、襦袢にやってね、透けるようにね。
でね、テレビだとライティングがすごいから動くたびに模様も動いてね、いいでしょ。その時小林幸子がいたのかな、ちょっと嫉妬してたね(笑)
着るもので遊んでた時代はあるね、着道楽っていうね。

ー最近のニュースを見てー

クマ:60年代は怒りっぽいやつが多かったな、けど今とは違う。昔は怒ったらゴツンってやるぐらい。分りやすい怒り。今はさー、分りにくいじゃない。

三太:昔はさ、唐さん(唐十郎さん)もむちゃくちゃやるんだけどさ。

クマ:俺、人殴っちゃったら、前歯殴っちゃってね、歯が手に刺さったんだよ、前歯が。で、バイ菌が入って腫れちゃった。
それで医者に行ったらね、「口の中はバイ菌が多いから気をつけなさい」って言われて、じゃあ接吻もダメですかって聞いたら、それはちゃんとしなさいって(笑)

ー三太さんも喧嘩してました?

三太:喧嘩してたっていうか必然的にそうなるんだな。

クマ:テント芝居ってそういう空間だからな。そういう喧嘩も景色だから。

三太:劇場だと最初からお芝居を観ようって人しか入って来ないけど、テントだと通りすがりの酔っ払いやホームレスも紛れ込んでくる。
それで騒いだりするとたたき出すんだけど、それを客は芝居の一部だと思ってやんやの喝采したりするんだ。そんなのもテント芝居の面白さだね。

ー末井さん(末井昭さん)とはいつ頃から?

クマ:南(南伸坊さん)がガロの編集長やめて、フリーになったんだ。イラストレーターとかって言い出して。その頃だな。
サンちゃんとこ行かなくなって、ガロの連中と付き合い出したんだな。劇画とか描いてたころ。
俺、今もそうだけど勘違いして生きてたから、つげ義春みたいになれるんじゃないかと思ってただよ。

〈状況劇場の演目だった「糸姫」が原作で月刊ガロの1975年11月誌上に発表されたクマさん漫画第一作目にして70ページの長編作品〉

ー女の話ー

ークマさんが、とある女性と別れる時にお布団の上でう◯ちしたって話は本当ですか?

クマ:あはははは!やめなさい!そんな話。あれ、本当なんだよねぇ。やっぱりね、深情けの女がね、俺のことが心配だって言うわけ、でなかなか別れてくれない。
ふつうに言っても別れてくれないから、心配してくれるのは有り難いんだけどね…若かったからかな、若いっていうか(笑)

ーで別れられたんですか?

クマ:うんこして逃げただよ。

一同爆笑

クマ:やり逃げだよ。悪い事したなって今は思うけど。

ーすごい別れ方ですね。

クマ:すごかねぇんだ、俺がただ卑怯者なんだよ。男女ってもんは話してもわかんねぇんだよ。やっぱりすったもんだするもんだから。
どうしても一年くらいすったもんだするなぁ。

ー長いですね。

クマ:何回も同じ話してさ、あとはもううんこするしかねぇじゃないか。恥ずかしいなぁ、大バカ野郎なんだよ(笑)

クマ:結局サンタと会った頃は30代、イケイケ盛りだよなぁ。当時かかぁと別れる前で行くとこなかったんだよ。

三太:だいたい二泊三日だったね。

クマ:三日目の朝にはドロンといなくなるだよ。礼も言わずなー。基本的にうんこたれなんだよ。
今は一泊だな。新幹線始まるころにはすーっと抜けていく。大人だから(笑)

《後半につづきます》