元祖着物男子!座談会《後半》

ゲージツ家のクマさん(篠原勝之さん)
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山川三太さん(元・劇団究竟頂(くきょうちょう)〈銀色テント〉座長)

 

《前半のつづき》

ー当時どこで着物を買ってたんですか?

クマ:その頃はね、浅草のね、仲見世あるでしょ、あれの裏っかわの方に古着屋がいっぱいあっただよ。
俺なんかね、女もの着るのが好きだった。ダリアが描いてあるやつとか、子どものやつだとか。
つんつるてんなんだよ、それ上に着たりいい加減なことしてたの。

三太:私は中野にある救世軍のバザーで。長着を一着500円位で買ってた。救世軍のバザーは今でもやってるけど。

ー着物を着るようになったきっかけって何でしょう?

クマ:アングラ!お手本はアングラだもん。でもね、その頃ね、深沢さん(深沢七郎さん)とかに会うと、俺、まだ30代で、それでそういう人に会うとね、みんなね、クマはそのまんまでいいって言うの。
意味はよくわかんねぇんだ、そのままでいいんだなっていう程度さ。

ークマさんが念願だったという50ミリレンズを買った話からー

クマ:年を取ると収入源がなくなるねぇ。ホントだよ。

ー今おいくつですか?

クマ:いま71だな、あと半年で72だ。

三太:麿さん(麿赤兒さん)とクマさんといると年わかんなくなる。

ーお二人ともお元気ですもんね。

クマ:昔っから麿さんの事は知ってんだけど、酒とか呑む事はなかったから、最近、よく蕎麦屋とか行くだよ。
だから、最近麿に会うのは嬉しいな。少年時代と違ってね、人に会うってなかなか嬉しい。じじいになると人に会うって嬉しいだよ。

ー着物の不思議ー

クマ:俺ね、着物いつも不思議なのはね、着物ってぜんぶ直線で出来てるだよ、カーブってもんがない。
でもね、唯一、ここの袂のとこだけが丸い。ちょっとここの角絞ってんだよ。ここのカーブが俺好きでね。

この袂に領収書とか溜まってくる、鼻かんだやつとか。過去を紐解くように捨てる。

ゴールデン街で呑む時はここに硬いもの入れておくのもいい。悪いやついたらコツーンと。
これ、武器になるでよ。それに着物は袖から袖に風がスーッと抜けるだよ、着物は風の通る装置だな。

三太:クマさんがさぁ、うちに遊びくるとき、お金ないから新宿から歩いてきてもう朝方なの。で、座長これお土産って、オイルサーディンの缶詰(笑)

クマ:ちゃんとね、お土産は持ってくの。

三太:けどね、オイルサーディンも買えない時あるの。そういう時はね、道端の花をね、編んで輪っかにして袂に入れてくる。

クマ:おしゃれなんですよ。

三太:手ぶらじゃこない。

クマ:基本はオイルサーディン。オイルサーディンってね、形も好きなんだけどね、あれ一個あればね、あれごとガスにかけてね、しょうゆたらしてね。これまたうまい。何やってもうまい。

 

ーいい加減な時代だったからね。生きていくために嘘ついて。それは大事な事なのー

 

《2013年7月27日新宿Nにて》


【篠原勝之さんプロフィール】
ゲージツ家KUMA。有機的な鉄、生命を育む大地。銅板に線を刻みこむ。
少年小説の新作「カミサマ」講談社より発売中。

・HP:http://www.kuma-3.com/

・Twitter @ge_jitsukaKUMA

 

【山川三太さんプロフィール】
1976年より劇団究竟頂〈銀色テント〉座長として作/演出/出演し、16本の作品を上映。
1986年に劇団解散後はフリーライター、編集者を経て株式会社オフィス・サンタを設立し、代表取締役に就任。
現在は過去の経験を活かし、演劇メソッドを活用したコミュニケーション研修「ドラマメトリクス」を展開している。
その傍ノンフィクション・ライターとしても活動。著書に「白鳥の湖伝説〜小牧正英とバレエの時代〜」(無明舎出版)「文化人類学通になる本」(インデックス・コミュニケーションズ)等がある。
現在は舞踏家・麿赤兒氏自伝の取材・構成・文を担当しており、今秋イースト・ブレスより刊行予定。

・オフィスサンタHP http://www.office-santa.co.jp/

・アングラ演劇盛衰記 http://www.office-santa.co.jp/santa-press/index/