酒とエロスと男と女 ー如月まみ

『着物を着ることが仕事です』

着物スタイリストでもあり、寿ユニット「ななまみ」で小唄や端唄をうたい、「二丁目なう」(CS)というレギュラー番組でMCを務める。
ついには「酒場のおんな」という本まで出版。着物業界の異端児、如月まみさんのインタビュー。

ー今日締めている帯、可愛いですね。アンティークですか?

如月:これは 男物の古い襦袢から作り直したもの。 素材はモスリン。

ー麻雀されるのですか?

如月:ギャンブルはしませんが、私の人生そのものがギャンブルのようなもの(笑)

ーかんざしも帯にあっていて、良いですね。

如月:今日のかんざしは サイコロと三味線。サイコロのかんざしは、骨董市で見つけたの。
昔のかんざしや、帯留めは細工がいいので、時々骨董市に探しにいきます。今は、だいぶなくなってしまいましたけどね…。

ーお着物は?

如月:縞。お召しです。 縞が一番好きなの。

(とりあえず一杯しましょう ーという事でまずビールを)

如月:今日は家で何も呑まないできましたよ(笑)

ー酒好きが高じて利き酒師の資格を取られるとか。

如月:勉強中です。近い内にとりますよ。

ー毎日呑んでらっしゃるのですか?

如月 :お酒は、ひとりで家で晩酌もするしよく呑んでいますが、 好きな人達と呑む時は、酒量がとても多くなってしまい、 ひと晩で二日分くらい呑んでしまうので、 翌日は呑めない、ということも多いです。
一年以上続いているレギュラーMCをつとめている「二丁目なう」という番組は、 新宿2丁目のゲイバーを本気ではしご酒するという番組で、 隔週で収録があります。お酒好きが高じて、仕事になってしまいました。

ー如月さんの人生テーマが「酒とエロスと男と女」という事ですが。

如月:物心ついたときから、男らしさ・女らしさについてとても意識し、考え、悩んできて、 思春期の頃は、女っぽく見られるのがイヤで ベリーショートにボーイッシュな服を着てみたりしたこともあったけれど、「着物」というわかりやすく女っぽい衣をまとうようになってから、逆に 精神と身体が一致したんですよね。
「二丁目なう」の番組内では、「ニューハーフ」と呼ばれてる(笑)

ー逆に男らしさとはどう考えてますか?

如月:「女とは」とか「女らしさ」とか女について中心にいつも考えているので、女を「いい女」に引き立ててくれるのが「男らしさ」という考え方に行き着いてしまいます(笑)
いい女になって男に愛されたいと 願う、いい女をゲットするためにいい男になろうと頑張る、といういい相乗効果が理想ですよね。
私個人的には、寡黙で「黙って俺についてこい」タイプにキュンときます。今時なかなかいませんが(笑)

『仕事より恋を選んできた』

ー着物の話に戻りますが、着付けをする上で気を付けている事って何ですか?

如月:襟合わせかなぁ。衣紋の抜き方含めて。 髪型によっても着物によっても気分でも変わるから。 パッと見た時の印象って顔周りでしょ?

ー補正はされてますか?

如月:かっちりしたくないから補正もしない。 気分や場所で着方も変えちゃう。

ー着付けといえば、如月さんは着物屋『くるり』さんの着付け講師をされていたのですよね。

如月:そう。ちょうどアンティーク着物ブームで、トータル4000人以上教えたかな。 当時は教えることが生きがいでした。

ー着付けやコーディネートを参考にしている本や映画ってありますか?

如月:昭和30年代頃の映画はよく見ます。「流れる」は何度も見ました。 花柳界を扱った有吉佐和子の「芝桜」という小説もとても好き。
大正から昭和の終戦前までの話が好きなんです。着物が一番華やかだった時代です。

〈流れる:幸田文原作の映画。1954年にデビューした幸田の、作家としての名声を確立した傑作である。自身の体験を踏まえ、華やかな花柳界と零落する置屋の内実を描ききった作品〉

その頃の風俗写真も見るのも好き。 当時の遊郭、吉原の文献や写真集も興味深く、集めています。
小さい頃に見た映画「吉原炎上」が私の人生のテーマ「酒とエロスと男と女」の 原点のような気がします。

私の好きな映画不動の三題は

「吉原炎上」

「愛のコリーダ」

「ラマン」

如月:あと、浮世絵や日本画はよく観に行ったり、画集をよく眺めています。 浮世絵に描かれている着物は斬新な柄のものが多く、柄や色合わせが面白いです。
日本画は、鏑木清方や伊東深水はやっぱり好き。鏑木清方の「築地明石町」はいつも自分の能裏にあるような気がする。 切手も持っています。浮世絵や日本画など着物の人が描かれている切手は、 近年、すべて大人買いしちゃいました(笑)
その他、日本画家では、志村立美、小村雪岱が好きです。 色香がにおいたってくるようで素敵ですよ。

『着物で分からない事があればぜひ如月まみに連絡を下さい』

ー着物とは、如月さんにとって何でしょう。

如月:自分の人生そのもの。けど、 そう言っている反面、全部火事になって燃えちゃっても平気。
所詮はただの、着るものという感覚はいつも持っている。着物は、一番自分らしさを表現できるアイテム。

ー着物の着こなしって人柄、生き方が出ますからね。

如月:着物は、制限があって自由じゃないからこそその中で遊ぶのが楽しい。私は、奔放すぎるところがあるので、不自由なくらいの方がちょうどいい。
私、毎日着物を着て、外を出歩いたり、人と出会ったりすることでお金を生むわけではないけれど、誰かが「着物って素敵だな」と思ってくれたら本望だし、それが自分のライフワークだと思っているんだよね。

ー着物が流行るとか、廃るとか、どうでもいいでしょう。

如月:あまり関係ないかもしれませんね(笑)この13年ほどの間に、折に触れ、「今、着物が流行ってますよね!」といろいろな人に聞かれることが面白い。むしろ、その人が着物に関心を示すようになったり、その人自身のブームなのかなと思う。
着物は非日常的だし、大勢の人が普段の生活の中で着るようになるとは思えないけれど、着物の着付けの仕方を義務教育に是非取り入れた方がいいのに、とは思っている。

ーそれに向けて何か動いていらっしゃるんですか。

如月:してない(笑)言ってるだけ。ただね、 自分がもっと認知されれば容易い事だと。そっちを今頑張った方がいいんじゃないかぁと。
それは、自分の中で モチベーションになってるね。 時間が限られてますからね、年齢的に!

ー着物はどこで買われますか?

如月:最近は買ってないねー。いただくことも多いし、今あるものが好きなもので大体揃っているので、それを大事に着ている。いつも何か素敵なものが欲しいとは思っているけど(笑)
表参道の大江戸和子には時々行く。すっごいいい子達なんだよね、お店の子が。一生懸命で。くるりもみんないい子。ICHIROYAのサイトは毎日見てる。

『やりたいこと全部やっちゃえ!』

ー着物スタイリストになりたい方や、着物に携わる仕事をしたい若い方からしたらとても憧れの存在だと思いますが。

如月:そんな事ないよー。上京して20年、今やっと「やりたい事をやれているのかなー」って実感してる。
上京した時の目標があって、それが絶たれたかのように思った時期もあったよ。 振り返ると、一筋の所を歩いて行ってるんだよね。
結局、 自分のやりたいことってひとつ。 遠回りして来たなぁ。けど、 これからも遠回りすると思う。

ー遠回りしても、身近な人のサポートがあってこそですよね。

如月:有難いことだよね。物事って組み合わせだと思うの。世の中の全てが、組み合わせの良し悪しで決まってくる。
人でも、食材でも、料理とお酒でも、何でも、すっごくいいもの同士でも相性、組み合わせが悪ければ、どちらもダメになってしまうの。
私には、ゼロからものを生み出す能力はないと思うけど、あるものを組み合わせることは、得意。最高の組み合わせを追求することが好き!

女性の今までの歴史が気になるし、世の中における女性の役割、存在意義 みたいなものを ずーっと考えながら生きてきている。
たぶんこれからもきっと。 そしてその対岸にいる「男」という存在も気になる。「男」って何?「女」って何?って ずっと思いながら生きていくと思う。

男性性と女性性にずっとこだわって生きていて、 着物を着るようになって、過剰に女をやることで心と体が一致した。
私にとって「着物」がその永遠のテーマに深くくいこんでいく鍵でもあるんだよね。

〈如月さんのお好きな写真集、「女優」(写真:篠山紀信)の加賀まり子さんを真似て…〉

ー2013.9/26 取材協力・蕎麦処 卯の屋ーふらりと猫達が集まる隠れ家のようなお店です。

☆今回、如月さんの最新著書「酒場のおんな」を2名の方にプレゼントいたします!

メールに
  ・件名 酒場のおんなプレゼント
  ・本文 氏名、郵便番号、住所を記入して〈 kimonojidai@gmail.com 〉までお送り下さい。 ※個人情報はプレゼントの発送のみに利用し、プレゼント発送完了後に弊社にて破棄いたします。
募集は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました!

プロフィール
如月まみ
過去に、雑誌、CM、TV番組、PV、コンサート、ショーの 着物のスタイリングと着付け、衣裳 制作の他、 カルチャースクール、企業セミナー等での着付け教室やスタイリング講座、ブランドとのコラボレーションなど、様々な仕事を経験。裏方としてのお仕事の他、本人も各メディアに出演し、着物や日本文化の美しさをPRしている。(海外での着物ショーの経験有り)
お仕事のご依頼は、 如月事務所  kisaragimami@kuc.biglobe.ne.jp まで
如月まみオフィシャルブログ http://ameblo.jp/kisaragimami/
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