絵金祭り
by 絵葉書屋 長崎堂

 

絵金祭り 2013.7.20〜21

一言で言うと、おどろおどろしい芝居絵屏風が蝋燭一本だけの灯りの元、店の軒先に飾られる、不思議なお祭りです。
その芝居絵屏風を描いた絵師が「絵金」

土佐と言えば、猫も杓子も「龍馬」ですが、赤岡という小さな町は、「絵金」一色です。

駅も商店街も街灯も橋も、これでもか!ってくらい「絵金」だらけで「絵金」好きは感涙すること必至。
東京で伊藤晴雨や月岡芳年があふれている町はないことを思うと、どれだけ凄いか分りますか?

食堂のおじいちゃまが、お孫さんに怒られながら慣れない手つきでパソコンとプロジェクター使って絵金さんの絵を味わいある語り口で解説してくれるとか、ディープ過ぎます。

真昼間から下ネタの隠し絵を、食堂の壁に"ど〜ん"と映すなか、お客は食事したりお酒のんだり。

このおじいちゃまは、ちょっとモダンな方なので、性器のことを横文字で言ったりするあたりが、また良い。

屏風は、19時〜21時の2時間のみ、軒先に現れます。

それまでの時間、おススメしたいのが、「弁天座」という芝居小屋。

演目は17時から始まりますが、15時には中に入れます。
炎天下で休む場所が少ないので、これは有難い。
しかも、升席があるし、もちろん飲食可能なので、ここでまったりするのも良いです。

演目は、絵金の描いた歌舞伎を地元の方々が演じています。
子供だけの「白浪五人男」とか、台詞の意味は分らず、高らかに口上するのが何ともカワイイ。
こういう芸能を身近に感じながら成長する子どもが羨ましい。

芝居絵屏風も子供からみたら「お化け」らしいけど、貴重な記憶に間違いないのです。
美術館でガラス越しに見る澄ました絵じゃなくて、蒸し暑い薄暗がりのなか、描かれた当時と同じように直接見ることが出来る絵は生命力が違うと感じました。
かつて大衆に愛された絵の姿がココには残っている。まさに「町の人々と共に生きる絵」なのです。

写真撮影OKなのも太っ腹〜。おかげで三脚やスナイパーなカメラ持参の中高年が、わんさか。

正直、絵を間近で見たくてもカメラ軍団が構えていると、絵に近づけない…。(土曜日の早い時間が特に多いので時間帯を選べば、大丈夫な感じではありました。)
それと、フラッシュ禁止を厳守の上での撮影OKなので、これは最低限守ってもらいたいが、カメラを使い慣れていない年配の方やお子様がやっちまってました。
自分もデジカメで撮影したので、偉そうなことは言えませんが、撮影NGでもいいかなぁと思うのです。
やはり本物の質感が分るぐらい間近で見ることが、この祭の醍醐味ですから。

うっかりすると見落としそうな絵馬提灯もお見逃しなく〜。
絵金が晩年、中風を患いながら左手で描いたものとか。
絵の勢いもさることながら、上下の充て紙が書き損じの紙を使っているので、美術品とは違う「生」の息吹を感じます。

最近は、公募による「えくらべ」展も同時開催しています。
絵金の芝居絵屏風が並ぶ町中に同じように現代作家の二曲一隻屏風が並ぶ。
これは、作家冥利に尽きる!見る側にしてみれば、絵金の絵も現代作家の絵も同じ「絵」ですから。
どんな展示よりも緊張感があります。絵描きの端くれとして、フツフツと参加したい衝動に駆られていますが…。はてさてどうするか。

最後に浴衣事情。
女性と子供は、割と見かけました。古典柄から今流行りのものまで。
自分の好みですが、古典的な浴衣でまとめ髪姿の女性が芝居小屋の升席に座る姿は良いものですね〜。
う〜ん、しかし、男性の浴衣は本当に少なかった…。ギャル男浴衣すら見かけなかった。粋な格好のおじいちゃまとか期待したのに〜。
男性の方が着やすいので、勿体無いなぁ。浴衣人口増えたら、祭の風景も、もっと良くなると思うのだが。。

絵金祭り

・日時:毎年7月第3土日に開催
・場所:香南市赤岡町本町、横町商店街
・主な催し:土佐絵金歌舞伎公演、路上解説、高木酒造酒蔵解放、絵金蔵夜間開館、ビアガーデンなど
・主催:土佐赤岡絵金祭り実行委員会
(TEL:0887-54-3014 )
・ホームページ:http://www.ekingura.com/

 
絵葉書屋 長崎堂

艶ゑ、切手、消印をこよなく愛する絵描き。
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